蒼き星の守護者 第2章—12— 解き放たれた驚異の剣術

 その場にいる誰もがウィルの驚異の一撃に目を奪われていた。辛うじて目で捉えることができたウィルの閃光の如き斬撃は怪物の石の手を綺麗な平面で切断していた。そのあまりの凄まじさにかつて王国騎士団の精鋭として名を馳せたクラウでさえも驚きを隠せなかった。それと同時に強大な闇ギルドフアラを壊滅させた、いや・・・それ以上のウィルの実力を思い知ることとなった。

「ぐお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!」

 自らの腕が切断されるなど微塵も思っていなかったその怪物は大きな声で悲鳴ともとれる咆哮を上げた。その怪物は体制を立て直すと標的をクラウからウィルに変え、残った右腕による爪の斬撃と巨大全体を使った突進で猛攻を仕掛けてきた。

 しかしウィルはこれらの攻撃を完全に見切り、全て紙一重で交わすと同時に無数の斬撃を叩き込んでいった。そして怪物の体は石でできているにも関わらず、ウィルの刀による無数の軌跡が刻まれていった。次第に怪物の体の損傷は大きくなっていき、遂には膝から崩れ落ちた。

「なんて強さだ・・・」

 自信もその一員として王国騎士団も含めて最強の剣士達を見てきたが、ウィルの強さ、剣術はそれらを遥かに凌駕するものであった。

 ウィルの強さに驚いているのは、つい先日のフアラとウィルの戦いを見ていたラスとメルトも同様だった。その強さはフアラと戦った時の体術と魔法の比ではなかった。おそらく体術よりも魔法よりもこの剣術こそがウィルの戦いの真骨頂なのだろう。

 膝から崩れ落ちていた怪物は辛うじてその活動を維持していた。ウィルには敵わないことを悟ったのか、特に攻撃してこようとせずにウィルの方を警戒して見ているだけだった。

しかし、その怪物は唐突に攻撃の矛先を、呆然としていてまだ近くにいたクラウに急に向け、せめて一人でも屠ろうと最後の力を全て振り絞って突進してきた。ぼうっとしていたクラウは咄嗟に動くことができなかった。しかし、またしてもウィルがクラウと怪物の間に立つと、その石の巨体の突進を片手で受け止めた。自らの巨体の突進を小さなウィルに片手で止められてしまった怪物は尚も力をいれ、ウィルを押し返そうとしてきた。だが、ウィルが力を入れるとそのまま後ろに仰け反った。そして次の瞬間、力を込めたウィルの渾身の袈裟斬りによって身体を両断され、遂には目の光が消え失せて動かなくなった。

 怪物が動かなくなったことを確認すると、ウィルは刀を鞘に収め、再び留め具によって厳重に固定した。そしてマナによる身体強化を解くと、精神を落ち着かせるように目を瞑って深く息を吐いた。

 ウィルの圧倒的な戦いを見ていた四人は怪物が完全に倒されてからもしばらく動けずにいたが、やがてメルトが口を開いた。

「ウィル君すっごーーーい!!!あんな怪物まで簡単に倒しちゃうなんて!!!あれ?でもその剣は使えないって言ってなかったっけ?」

 メルトは出会った当初にウィルがその腰の刀を飾りみたいなもの、使えないと言っていたことを思い出した。

「ああ、あれは嘘を言った訳じゃないんだ。ただ・・・、普段は使えないんだよ」

「どうして?そんなに強いならそれで戦った方が楽なのに」

「大切な人との誓いがあるから・・・だからこの剣は大切な人を護るときにしか使わないって決めたんだ。それとこの剣を使って人や命あるものを無駄に傷つけることもしないって」

 ウィルはそう言って刀をそっと握った。

「さてと、クラウさん大丈夫ですか?」

「ああ・・・、助かったぜ」

「クラウ、大丈夫!?」

 怪物の攻撃を受けてしまったクラウを心配してフェルナが駆けつけてきた。余程心配だったのかフェルナらしくない表情を浮かべていた。

「なんとかな・・・、いてて・・・」

「って脇腹から血が出てるじゃない!?」

「ああ、これか。さっき吹っ飛ばされたときに軽くやっちまったらしい」

「早く村に帰って手当をしなきゃ・・・」

「なーに、これくらい平気だって」

 フェルナがとても心配そうな表情でクラウの怪我を見ていると横からウィルがそっと近づいてきてクラウが怪我をしている箇所に手をかざした。すると、ウィルの手が優しい緑の光に包まれ、クラウの傷口がみるみるうちに塞がっていった。その光景にクラウとフェルナは目を見開いて驚いていた。

「これは・・・」

「少しだけクラウさんの細胞を活性化させて傷口を塞ぎました。完全に治っている訳ではないのであまり無茶はしないでくださいね」

「すまん、助かった」

「ねぇウィル、今のは・・・」

「まあ、いわゆる魔法ってやつです」

「まじか、反則だろ」

「驚異の剣術に加えて魔法まで使えるなんて・・・とんでもない新入りが来たもんだね。これはうちのギルドも安泰ね」

「ちょっと、ウィル!魔法は内緒だったんじゃないの?」

 魔法のことは秘密だと約束したのにウィル自らが明かしてしまったことにラスは少しだけ怒っていた。

「え?まあ、魔法なんて習得した人なら使えるものだし」

「嘘!ウィルの魔法は普通の魔法と違うって言ってたじゃない」
「あ・・・」

「お姉ちゃんの馬鹿・・・」

「あ、そういえば確かに魔法の割には詠唱も無かったしなんか変だったねー」

「え!?あ、あはは、気のせいじゃないですか?」

「うーん、そうかなー」

「まあ、皆無事だったんだしいいじゃねぇか、それより早くオーパーツを回収して村に戻って調べてみようぜ」

「あ、すっかり忘れてた!」

 そう言うとメルトは再びオーパーツの元へと走っていた。

「ちょっとメルト!また何も考ないで!さっきみたいにまた何か起きたらどうするのよ?」

「へーきへーき!流石にもう大丈夫だって!」

 メルトは再びオーパーツの篭手を掴んで台座から引き離そうとした。すると、先程までがっちりと固定されて台座から離れなかったのが嘘のように簡単に取ることができた。そして今度は特に何も起きることはなかった。

「オーパーツゲットー!」

 オーパーツを手に入れたメルトは高らかと掲げた。

「じゃあとりあえず村に帰ってから調べてみようか」

 オーパーツを無事に手に入れた五人は、村の干魃の原因がオーパーツによるものなのかを調べるためにひとまず村へと帰ることにした。

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