蒼き星の守護者 第2章—13— 集積の篭手

 篭手のオーパーツを持って帰ってきたウィル達は尊重の家の一室を借りてその力を調べていた。今この部屋にいるのはウィルとクラウ、フェルナの三人だけで、ラスは持ってきた食材で村の人達に料理を振る舞い、メルトは少し元気になった子供達と一緒に遊んでいた。

「本当にこの篭手が辺りの水を吸っちまったのか?」

「私にはこんな小さい篭手に大量の水が吸い込まれるなんて思えないんだけど・・・」

「でも確かにこの篭手は遺跡の天井から滴り落ちた水を吸収していました。ちょっと待っててください。」

 篭手を自分の正面に置いたウィルは詠唱をする振りをしつつ、古代魔法”水鞠”によって小さな水の玉を空中に生成した。すると空中に生成された玉は重力によって地面に吸い寄せられた他に、篭手の力によってそちら側へと吸い寄せられ、やがて篭手についている紅玉へと吸い込まれていった。

「ほー、本当に吸い込んじまいやがった」

「こんな小さな宝石の中に水が入るなんてね・・・」

 フェルナは篭手を持ち、篭手にはめられた紅玉を覗き込んだり叩いたりしていた。

「でもこれが本当に水を吸い込んでいるってわかったところでどうするつもりなの?別の場所に持っていったところでそこがまた同じ被害に遭うことになるだろうし」

「昔文献で読んだことがあるのですが、オーパーツの中には特別な力を持った3つのものが存在するらしいんです。そのうちの一つの特徴について、その文献には有体物、無体物に関わらず無限に集積することができると記されていました。もしかするとこの篭手はそのオーパーツなのかもしれません」

「集積か。だったらその逆もできるかもしれないってことか」

「はい、その通りです。試しに少し出してみますか。やり方はおそらく他のオーパーツと同じだと思います。今まで見つかっている全てのオーパーツはその力を発動させる条件が二つあります。一つは力を使いたいオーパーツと自分の体が接触していること。そしてもう一つは・・・」

 ウィルはその篭手を手で持って立ち上がった後、手を前に突き出して目を瞑った。すると篭手の紅玉の部分から大量の水が流れ出てきた。そしてウィルはゆっくりと目を開いて言った。

「その力を使いたいと念じることです」

「おー、本当に水が出てきやがった」

「流石はシャムロックで一番のディガーね!一人しかいないけど」

 クラウもフェルナもウィルに感心しているようだった。

「オーパーツの力は生き物が接触し、そのオーパーツが持っている力と合致することを念じなければその効果は発動しません。きっと遺跡に迷い込んでしまい、喉が渇いた動物が水を飲みたいとでも願いながらこの篭手に触れてしまったのかもしれません。」

「なるほどねー。じゃあ今はもう水を吸い込むことは無くなったってこと?」

「ええ、そのはずです。」

 ウィルはそう言うと先程と同じように水鞠を使い、空中に水の玉を生成した。すると今度はその篭手に吸い込まれることなく床へと落ちていき弾けた。

「これで干魃の問題も無事解決ってことか」

「そうですね」

「それじゃあこのことを村長やコルネに報告しないとね!」

「せっかくですから村の広場で皆さんに説明しましょう」

「じゃあ俺は皆を呼んでくるわ」

 そして少し時間が経ち、ウィル達や村の人々は村の広場に集まっていた。ラスやメルトのおかげでこういう所に顔を出せるまで元気になったのか、最初にこの村に来た時よりも人が多い気がした。村の人達はこれから何が起こるのかわかっていないようで少しだけざわついていた。

「静かにするんじゃ!村の皆よ、我々は長い間土地の乾きと飢えに苦しまされてきた。しかし、ここにおられるシャムロックの方々が干魃の原因を突き止め解決してくださったようじゃ」

 村長がそう言うと一旦静かになった村人達はより一層ざわついた。解決したと言葉で告げられても未だ大地に潤いは戻ってきていないため、皆にわかには信じられず、中には野次を飛ばす者などその内容は様々だった。ウィルは村人達を安心させるために立っていた広場の中央から少しだけ前に進み、篭手のオーパーツを取り出した。ウィルの行動を村人たちは静かに見守った。

「皆さん、私達は川の上流にある遺跡から、この辺り一帯の水を奪っていた原因であるオーパーツを見つけました。それがこれです」

 ウィルはオーパーツが水を奪っていたことを説明するために水鞠を使い、水が吸い込まれていく様子を見せた。その後、オーパーツに対して水を吸収しないように、と念じた。

「今水を吸収することを封じたのでこのオーパーツが水を吸い込むことはもうありません」

 すると再び水鞠を使い、今度は水が吸収されないことを村人達に証明した。すると今まで静かにしていた村人達が一斉に喜びの声をあげた。村人達のそのような様子をみたクラウとフェルナは互いに顔を見合わせて笑い合い、ラスとメルトは二人で手を合わせて喜んでいた。村人達と同じようにウィルのやったことを見ていた村長とコルネはひと目もはばからずに涙していた。

 村中に歓喜の声が響いていたその時、この出来事を祝うかのような恵みの雨が皆の乾きを癒すかのように降り注いだ。村人達は大いに喜び、雨が降っているにも関わらず広場ではしゃぎ続けた。そしてその日の夜には村長の家に村人全員が集まり、ウィル達に対する感謝の宴が開かれた。

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