蒼き星の守護者 第2章—11— 金色の円舞

「おら!」

ガキンッ――

 クラウの豪快な一撃が石の怪物に叩き込まれる。クラウは自身の身の丈の三分の二程もある巨大な剣をいとも簡単に操ってみせている。石で出来ている相手の表面は大剣の豪快な一撃でも傷つけることはできないが、多少衝撃を与えて動きを鈍らせることはできているようだった。

 怪物も負けじとクラウに飛びかかり己の兇刃を右と左と振りかざす。しかしクラウは鈍重な攻撃をさらりと躱していく。

 一方フェルナは遠くから矢を番え弦を引き絞り、怪物に向けて放っていた。直接矢を当てるのではなく、クラウが動きやすいように怪物の行動を抑制するような位置を目掛けて射っていた。

「俺に当てるんじゃねえぞ!」

「クラウこそ勝手に射線上に出てきて邪魔しないでよね!」

 二人はそう言いながらも流石にずっと一緒に王国騎士団で戦ってきたとあってその息はぴったりだった。クラウやフェルナが相手の攻撃を躱し、攻撃をする度に二人の金色の髪が風に揺れた。

「すごい・・・」

 メルトは二人の息のあった戦い方に思わず見入っていた。するとメルトを安全なところに連れ戻すためにウィルが走ってきた。

「メルト、こっちへ!」

「あ、うん!」

 ウィルはメルトを自分の背に入れて怪物からかばうようにしながらラスのところまで走っていった。無事にメルトをラスのところまで連れて行ったウィルは二人と一緒にクラウとフェルナの戦いを見つめていた。

「クラウさんとフェルナさんってとても強いんだね」

「ええ、二人共もともと王国騎士団の団員だったから。クラウなんて普段あんなだけど騎士団だった頃は相当強かったらしいよ」

「いけいけやっちゃえー!」

「俺も戦えたらよかったんだけど・・・」

 ウィルは申し訳なさそうに呟いた。

「やっぱり魔法のこと気にしてるの?あの二人に見られるとまずいとか?」

「確かにそれもあるんだけど、この地下の狭い場所で迂闊に魔法を使ってしまうと天井が崩れてしまうかもしれないからね。だから使いたくても使えなんだ」

「そっか。あんなに強いけど万能って訳じゃないのね。でも大丈夫よ!あの二人ならきっとなんとかしてくれるよ!」

「そうだといいんだけど・・・」

 今も余裕そうに戦っている二人を見て大丈夫たと言うラスに対して、ウィルはどこか浮かない表情をしていた。

 しばらくしてからウィルの浮かない表情の理由が徐々にラスにもわかるようになってきた。初めこそ敵の攻撃を余裕で交わしながら戦っていた二人だが、こっちの攻撃がその石の体には全く通用しない上、二人がだんだん体力を消耗して動きが鈍くなってきているのに対し石の怪物の動きは依然と鈍くならない。次第にラスとメルトの表情が曇っていく。

「あわわ、どうしよう、まずいよ」

「クラウ・・・、フェルナ・・・」

 必死に戦っている二人も額に汗を浮かべながら苦しい表情を浮かべていた。
「くそっ、流石に石でできた化物相手になんか戦ったことないからキツイぜ!」

「矢の残りも少なくなってきたし疲れてきたしそろそろまずいかも・・・」

 怪物の当初と変わらない猛攻にクラウは次第に追い詰められていった。そして遂に怪物の爪攻撃に捉えられた。爪自体はなんとか剣で防いだものの、そのあまりの力にクラウの大きな体が吹きどばされてしまった。

「がはっ」

 クラウは背中から強く打ち付けられ、一瞬呼吸ができなくなった。

「クラウ!!このっ!!」

 フェルナが矢で怪物の気を引こうとするも既に矢が自分にとって驚異ではないことを学習した怪物はそれを無視してクラウの方へと近寄っていった。

「くそっ、体が思うように言うことをきかねぇ・・・」

 クラウは必死に立ち上がろうとするも、呼吸がまだまともにできないせいかなかなか立ち上がることができなかった。そうしている間にも怪物は徐々に間合いを詰め、遂にはその腕を振り上げ、クラウの頭目掛けて振り下ろした。

「っ」

「クラウーーーーーーーっ!」

 誰もが駄目だと思い、フェルナ以外は皆目を瞑って背けた。しかしいつまでたっても怪物の攻撃が来る様子はなかった。クラウが目を開けるとそこにはクラウと怪物の間に立ってい攻撃を受け止めているウィルがいた。ウィルは重そうな怪物の手を腰に付けていた刀で鞘ごと受け止めていた。そしてウィルが力を入れて押し返すと怪物は大きく後ろに仰け反り豪快な音を立てて転んだ。

「ウィル、お前・・・」

「クラウさん、大丈夫ですか?」

「あ、あぁ・・・」

 ウィルはクラウが無事なことを確認すると、パチン、パチンと刀身が容易に抜けないように固定していた留め具を外し、その刀身を抜き放った。

「クラウさんとフェルナさんは下がっていてください。ここからは俺が戦います」

 ウィルは自分の中で何か覚悟を決めたかのように深く息を吐き、刀を構えると鋭い目つきで怪物を睨みつけた。そしてマナによる身体強化をすると深く腰を落とした。そしてその直後、ウィルの強烈な一閃が怪物の左腕の肘を捉え、その肘から先がゴトンッと音を立てて地面に転がった。

蒼き星の守護者 第2章—10— 待ち受けているもの

 ラスが見つけた隠し通路をウィル達は慎重に進んでいた。隠し通路は予想外にも一本道でうねりながら下っていく長い階段になっていた。特に罠のようなものも無く、時間はかかったものの難なくその最奥までたどり着くことができた。

 その遺跡の最奥には大きな四角い部屋があり、陽の光が届いていないにも関わらず灯のオーパーツによって部屋全体が照らされていた。

「うわー、広―い!何この部屋―」

「どうやらここがこの遺跡の最深部みてーだな」

「ねえ、ちょっと見てあれ!」

 皆が部屋を見渡していると何かを見つけたフェルナが皆に声をかけた。フェルナが指した先の方を見るとそこには巨大な台座があった。そしてその台座の上には光沢のある素材で作られた篭手のようなものが置かれていた。その篭手は手首の周囲を包み込む程度の小さなものではあるが、銀色に輝く表面にはきめ細かい模様が施されており、中央には透き通った紅玉がはめ込まれていた。

「あれ、オーパーツ・・・?」

 その篭手が放つ見たこともない綺麗な光にラスは目を奪われてしまった。隠し通路といい、設置されている場所といい、このオーパーツはそこらにあるものとは何か違った雰囲気を纏っていた。

「あれは・・・?」

 皆がオーパーツに目を奪われているときにウィルがその異変に気付いた。天井から染み出してきた数滴の水の雫が、地面に落下することなくその篭手の紅玉の部分に吸い込まれていったのである。

「どうやらあのオーパーツには水を吸収する力があるみたいです。この周囲の干魃の原因はあのオーパーツのようですね。」

「まじか、当たりだな!」

「おー、やったね!」

 そう言うとメルトは台座の上まで一気に走っていった。

「メルト、いきなり近づくのは危険だ!早くこっちに戻ってくるんだ」

「えっ?」

 メルトがウィルの声に気づいたときには既に台座の上まで登っていた。一瞬皆に緊張が走ったが、しばらくしても何か起こる様子は無かった。

「もう、ウィル君脅かさないでよ!特に何もないみたいだよ?」

「でも何があるかわからないからウィルの言うとおり気をつけるんだよー?」

「へーきへーき!もう皆心配しすぎだよ。早くこのオーパーツ持って帰って調べちゃおう!」

 メルトはウィルとフェルナの忠告を聞かずにオーパーツの篭手へとその手を伸ばし、台座から取ろうとした。

「あれ?」

「!?どうしたメルト?」

「この篭手台座にくっついてて離れないよー!うーーーーん!このーーーー!」

「ちょっと、脅かさないでよ!」

「あれー、おかしいなー。クラウー!ちょっと手伝ってー!」

「おー、今行くから待ってろー」

 メルトに呼ばれたクラウは台座の方へと歩いていこうとした。そのとき、急に天井から巨大な何かが降ってきた!

ズドンッ――――

 その巨大な何かは鈍い音を立てて地面とぶつかった。その直後、クラウは自分を睨みつける二つの赤い目を見た。

「クラウさん!避けて!!」

 ウィルに言われる前にクラウは反射的に身をかがめていた。その直後クラウの頭のわずか上を巨大な石の爪が風を斬る轟音と共に通過していった。

「クラウっ!大丈夫?」

「あぁ、なんとかな!危ないところだった!よっと!」

 爪の攻撃を躱したクラウは体制を立て直して距離を取るために後ろに跳んだ。

「こいつは一体なんなんだ!?」

 距離を取ったクラウが改めてその巨大な何かを確認すると、そこには二本の角を持ち、背中にコウモリを彷彿させる羽根が生えた巨大な怪物がいた。その怪物は全身が石のようなものでできており、その重たさを証明するかのような地面に響く足音を立ててゆっくりとクラウの方へと向き直った。

「何あれ・・・怖い・・・」

 その威圧感がある見た目と動きにラスはガタガタと小刻みに震えていた。

「多分あのオーパーツの番人だ。以前書物で読んだことがある、非常に強い力を持ったオーパーツは何かしらの強い力で護られていることがあるらしい。それは結界のようなものもあればまるで生物のようなものが近づけないように護っていることもあるとか」

「へー、じゃああいつはあのオーパーツを私達がここから持ち去ろうとしたからそれに反応して落ちてきたって訳ね」

「ええ、おそらくは・・・。すみません、すっかり失念していました」

「気にすることはないさ。村があんなになった原因を作っているのがあのオーパーツならいずれにせよ持ち出す必要があったんだ。それよりも今はあいつをなんとかしないとね。ラスは私の後ろに隠れてなさい!メルトはそこから動かないで!クラウ、久々の戦闘だけど準備はいい?」

「誰に言ってるんだフェルナ、これでも俺は元王国騎士団の近衛兵だぜ!行けるに決まってるだろ!」

「それならよし!ウィル、あなたは急いでメルトをここに連れてきて二人を護ってて!」

「わかりました!」

「久しぶりの戦闘だな。腕が鳴るぜ!」

「もう騎士団を引退してしばらく立つんだからあまり無理しないでよ?」

「わかってるって!じゃあいっちょやるか!」

 そう言うとクラウは背中に背負っていたバスターソードを抜き目の前に両手で構え、フェルナも弓を背中の留め具から外して矢を番えて戦闘態勢をとった。そして怪物が咆哮すると共にそれぞれが一斉に動き出した。

蒼き星の守護者 第2章—09— 初めての遺跡調査

「おーい、ラス大丈夫かー」

「きゃああ!」

「ラス、大丈夫?」

「ありがとうウィル、平気よ」

 公式にはこれが全員初めての遺跡調査になるため、特に街の外に慣れていないラスは小さな虫やコウモリが暗闇の中で音を立てて動くたびに悲鳴をあげていた。メルトは対照的に好奇心旺盛な感じで見たことのない遺跡の中の様子に興味津々だった。

 ガササッ

「きゃああっ、今度は何?」

「もうお姉ちゃんうるさいなー!」

「仕方ないでしょ!地下遺跡に入るなんて初めてなんだもの。こんなに暗くて不気味なところだってわかってたら村で休んでたわよ!」

「まあまあラスもメルトも落ち着いて。慣れれば暗さや動物くらいは怖くないから。それよりも本当に危険なのは遺跡に仕掛けられている罠だからそれだけは注意して怪しいところがあったら近づいたり触ったりしないようにね?」

 遺跡に入るのは初めてで通しているはずのウィルだがやたらと熟れた感じでラスとメルトに注意をした。

「それにしても本当にカビ臭いところね。暗いしジメジメしているし早く地上に戻りたいわ。もう部屋も仕掛けも全て他の人に調べられてるみたいだけど本当にこんなところにオーパーツがあるのかい?」

「うーん、まだなんとも言えませんね。とりあえず大変ですが念のため一通りの部屋を見て回ってみましょう」

 ウィル達は遺跡の部屋を一つ一つ見ていくことにした。遺跡の構造は多種多様ではあるがこの岩壁の中に作られた遺跡はそこまで大きく無いようだった。ざっと深さは地下四階、部屋の数も三十程度と一般的な遺跡と比べれば小さい規模であった。それでも従来の調査と違って調査されていない部屋との差分ではなく全ての部屋を改めて調べていかなければならないためそれなりに時間はかかる。地下にいるため陽の照り具合がわからず実際にどれほどの時間が経過したかはわからない。しかし、全ての部屋を調べ終えた頃にはなかなかの時間が経過しているように思えた。

「はぁ・・・疲れた・・・全部の部屋を調べても結局オーパーツも手がかりも見つからなかったね」

「あー、もっとワクワクする何かがあるかなーって思ったんだけどなー。さすがに私も疲れちゃった」

 あまりこのようなことに慣れていないラスとメルトには長時間の劣悪な環境での行動は堪えるようだった。

「しっかし結局何も無かったみてーだがどうする?とりあえず村に戻るか?」

「うーん、このままここにいても仕方がないしねー・・・。一旦戻ってからまたどうするか考えようかしら」

 クラウやフェルナはさすが元王国騎士団といったところか普段から身体を鍛えてあるので肉体的な疲労は感じていないようだった。しかし収穫がなかったことに対して精神的に疲労しているようだった。

(うーん・・・オーパーツが原因のような気がするんだけど・・・オーパーツの場所は魔法では探れないしな・・・クラウさんやフェルナさんの言うように一旦戻るしかないのか・・・?)

 ウィルは考え込んでいたがラスやメルトのこともあり、一旦村へ引き返すことにした。

「はぁー・・・結局無駄足だったねー」

「ごめんねメルト。自分がオーパーツが原因かもなんて言わなければよかったのに」

「あ、ううん!気にしないでウィル君!確かに何もなかったけど初めて遺跡入れたから楽しかったよ!」

「でもどうしよう、村の人がっかりするかな・・・?」

「こればっかりは仕方の無いことだもの。とりあえず村長さんやコルネさんに謝って次のことを考えましょう」

 ラスはそう言って遺跡の出入り口の方へ向かって足を進めた。足への疲労が溜まっているのか右手を壁につきながら重い足取りで歩いていた。そのときラスの後ろを歩いていたメルトがそれに気付いた。

「お、お姉ちゃん。それ、それ・・・」

「え、どうしたの?」

「お姉ちゃんの右手の上のところに・・・」

「え?」

 メルトに言われラスは自分の右手の方を見た。するとそこには大きな蛇が舌をチロチロと動かしてラスの方をじーっと見ていた。

「ひっ・・・いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 至近距離にいた大きな蛇に驚いたラスはメルトやウィルにぶつかりながらも先程まで歩いていた方向とは逆方向に全速力で駆け出した。

「あ、ちょっとお姉ちゃん!」

「ラス、走ると危ないよ!」

「どうした!?」

「ラスのすぐそばに蛇がいて、それを見て驚いて逃げて言っちゃったんです!」

「ったく、しょーがねーやつだなー」

「クラウさん、すみません。フェルナさんとメルトとここで待っていてください。僕が連れ戻してきます!」

 そう言うとウィルはラスを追いかけていった。その頃ラスは・・・

「いやあああああ!蛇!嫌よ、来ないでー!」

 ラスはそもそも追いかけてきていない蛇を怖がり、叫びながら走り続けていた。松明の持っていないラスは周囲が完全な暗闇になっていたがそんなことはお構いなしに逃げ続けた。しかし、遺跡の通路は何度も曲がっているためやがてラスは目の前が壁だと気付かないまま全速力で壁に激突した。

「あうっ!」

 激しく壁にぶつかったラスはそのまま跳ね返って地面に倒れた。

「いたたたた・・・」

 ラスは意外と頑丈なようで全速力でぶつかったにも関わらず大した怪我はないようだ。ラスが壁にぶつかってからすぐに松明を手にしたウィルが駆けつけてきた。

「ラス、大丈夫?怪我は無い?」

「少しだけ鼻ぶつけた・・・」

 ラスは目に涙を溜めて赤くなった鼻をさすっていた。

「そっか。大した怪我が無くてよかった。少しだけ手当するからそこに座ってて」

 ウィルは先程ラスがぶつかった壁に彼女を寄りかからせると鞄から消毒液と布を取り出し、ぶつけて擦りむいたラスの鼻を優しく手当をした。

「よし、これで大丈夫かな」

「ありがとう・・・」

「よし、じゃあ皆が待ってるところまで一緒に行こうか。もう歩ける?」

「うん、平気」

 そう言うとラスは後ろの壁に手をつきながら立ち上がろうとした。しかし、そのとき

「きゃっ」

先程ラスがぶつかって脆くなっていた壁かガラガラと崩れて倒れ込んでしまった。

「ラス、大丈夫かい?」

 崩れた壁の煉瓦に少しだけ埋もれながらけほっけほっと埃によってむせていた。

「もうっ、なんなのよー」

 尻餅をついていたラスは体に乗っている煉瓦をどけて服についていた埃を払うと今度こそ本当に立ち上がった。すると先程崩れた壁の向こうにはまた新しい通路が続いていた。

「これは・・・隠し通路か」

「え、なになに?」

「隠し通路だよ。ここはまだ誰も調査していない領域みたいだ。もしかしたらここにオーパーツがあるかもしれない!」

 ラスは状況が把握できていないようだったがウィルが喜んでいたため少しだけ嬉しそうにしていた。ウィルはラスを連れ一旦クラウ達が待っている場所へと戻った後、隠し通路があったことをクラウ達に告げると今度は皆で先程の隠し通路があった場所へ戻ってきた。

「うわー、まーた隠し通路とはベタだねぇ」

「お姉ちゃんの蛇嫌いが役に立ったね!」

「壁を破壊するとは・・・実はシャムロック最強の力を持っているのは俺ではなくラスか・・・。今度から気を付けよう」

 隠し通路が見つかったことに各々言葉を述べていたが、いくつかはラスへの悪口が混じっているようだった。それに反応したラスがまたクラウとメルトにぎゃあぎゃあと言っていたが、フェルナにうるさいと睨まれると皆静かになった。

「ここから先は今まで誰も入ったことのない場所なので、恐らくオーパーツも残っているかと思います。そして未解除の罠も・・・。ここからは何があるかわからないので皆さん本当に気をつけてください」

「そうだね、ここからは気を引き締めないと」

「ここからはクラウさんがしんがりをお願いできますか?多分罠も多数あると思うので俺が先頭に行きます」

「大丈夫なのか?」

「一応遺跡に関することは多少勉強したので同じような罠であれば対処ができるかと思います」

「そうか、じゃあ任せたが無理はすんなよ」

「わかりました。それじゃあ行きましょうか」

 ウィル達は隊形を整えると未知の領域である遺跡の更に奥深くへと足を進めた。

蒼き星の守護者 第2章—08— 岩の遺跡

 ウィル達は村の裏山から川に沿って上り、村長が教えてくれた遺跡を目指すことにした。裏山は村から川に沿ってほんの少しばかり森の中を歩いたところにあり、その入口にはその高低差と川によって作られる滝があった。とは言っても今は水が流れていなく、その岩肌や乾いた土が露出してしまっているが。

 裏山の入口まで付いて来てくれたコルネによると、かつてはここに轟音を立てて流れ落ちる滝があったのだとか。その滝によって描かれる七色の虹を見ることがこの娯楽の少ない村での子供達の数少ない楽しみだったと悲しそうにコルネは言う。

 そんなコルネに向かってクラウは水も子供達の笑顔を取り戻してやるさと格好つけたことを言っていたがその直後に、だから今度デートしようなどといったものだから金属製のすね当てに覆われていないふとももをフェルナに思いっきり抓られて悶絶していた。

 さて、コルネが書いてくれた地図に従って川を上り、目印となる大きな岩のところで川から離れるように森の中を歩いて行ったウィル達の前にはとても人が登れない傾斜の岩壁が広がっていた。そんな岩壁の中央にぽつんと大人二人が入れそうな大きさの穴が空いていた。

「うわー・・・、いかにも遺跡って感じがするね!」

「すごい・・・」

 あまりヴィオラの街やブルメリア王国の城下町以外に行ったことのないラスとメルトの二人は呆気にとられていた。

「ほらほら、二人共ちゃんと下を見て歩かないと転んで舌噛んじまうぞ」

 遺跡の方を見て喋りながら歩いている二人にクラウは足元に気を付けるように注意をした。

「どうやらここの遺跡には門番はいないみたいですね。俺が今まで見てきた遺跡には門番がいて資格や通行書の確認をしていたところがあったのですが」

「まあこれだけ人がこなさそうなところだと人件費もかかっちゃうしいないのかもしれないね。それよりもウィルってディガーの資格はヴィオラの街に来てから取ったんじゃなかったっけ?あれー、もしかして悪いことでもしてたのかなー?」

「え!?あ、あはは、嫌だなーフェルナさん。ディガーになるために遺跡のこといろいろ調べたり見たりしてただけですよ」

「ディガーの資格取ったばかりにしてはオーパーツの分析も慣れていたみたいだしどうだかねー」

「あははは・・・」

 なかなかフェルナに鋭いところを突かれ、ウィルはたじろいでいた。

「さて、お前ら準備はいいか?放置された遺跡の中は野生の動物がいるかもしれないしどんな罠が残っているかもわからねぇ。しっかりと用心しておけよ!念のため俺が先頭を行くからお前達三人は安全が確認でき次第後ろから付いてこい。ウィル、お前はそこそこ戦えるみたいだからしんがりを任せてもいいか?」

「はい、わかりました!」

「よし、それじゃあ行くぞ!」

 ウィル達はクラウを先頭にして松明を照らし、遺跡の中へと入っていった。